株
2019.01.25
2022.12.02
いわゆる株式投資というと、それほど詳しくない方でも、企業が売り出す株を購入して、その価格の上がり下がりで利益を得るもの、といったイメージがあると思います。
しかし実際に株式というものが何のために売り出されて、購入した人はどのような仕組みによって利益を得るのか、具体的に理解している方は意外と少ないのではないでしょうか。
ここでは、株についての知識がない人のために、株式投資の基本を一から解説していきます。
株式などの投資による資産運用に興味をお持ちの方はもちろんのこと、一般常識としても知っておいて損のない情報になります。
株式に対する基礎知識があれば、日々のニュースなどに対する理解もより深まるでしょう。
通常、会社組織が営利活動を行うためには、運転資金が必要になります。
そこで株式会社の基本的な資金調達方法として用いられるのが、会社の株式発行です。
株式の発行は、まず会社側が株主を募集し、その募集に応じた株主の全員か一部に対して株式(株券)を発行します。
株式を引き受けた株式引受人は、引き受けた株の額面(株数)に応じた現金を払い込むことになります。
こうして株主から得た資金を元に、会社は事業を進めます。
一方で株主は、この会社に対して、経営方針など会社の運営に介入する権利を持つほか、会社が業績をあげた場合、株式の保有率に応じて、利益の還元を受けることになります。
その他、会社側から株主優待として、株主に対して会社が持つさまざまな商品やサービスを提供することもあります。
基本的に株式の制度は、「会社側にとっては不特定多数から事業資金の融資を受けやすくして、多額の資金を集められる。」
株主側にとっては、「会社から得られる配当の他、株式の対価として払った額以上の責任を持たずにすむ。」
具体的には、「万が一その会社が倒産したとしても、株式を購入した金額を失う以上の損失は蒙らない有限責任の立場である。」
また「株式の権利を第三者に自由に売却できる。」というメリットがあります。
この株式会社の起源は、17世紀、大航海時代の「オランダ東インド会社」に遡ります。
当時、航海で貿易に成功すれば莫大な富が得られた反面、航海計画には巨額の資金が必要で、しかも成功率は20%程度というハイリスク・ハイリターンな事業でした。
そこで現在の株式会社の原型として、大勢の資産家から少しずつ航海資金を募り、資金を受け取った証として株式を渡し、航海に成功した暁には、その利益を株式の保有率に合わせて分配し、もし失敗に終わっても、株主は投資額を失うだけで済むというシステムが生まれたのです。
基本的に、ある会社の株式を買うということは、その会社の社員権を買うことだと解釈されます。
社員権といっても、株式を買うと、その会社で働かねばならないというのではなく、株主は会社の一員として会社経営に参加し、株式の所有比率の分だけ、会社経営に関わる権限を得るという意味です。
株主はたとえ1株しか持っていなくとも、その会社に資金を提供した、いわば会社のスポンサーに当たります。
したがって株式購入と引き換えに、会社経営について自身の意思を反映させる権利と、会社が業績を挙げた場合、配当を得る権利が得られるのです。
株式会社における最高の意思決定組織は、株主の集まりによる株主総会です。
この株主総会では、基本的には株の保有割合による多数決で会社の経営方針から社長や役員の任命、解雇まで会社のあらゆる重要事項が決定されます。
したがってその会社の株の51%以上を所有する株主は、事実上、会社のオーナーになります。
多くの会社では、経営の安定のため、株式の半分以上から三分の二を、経営者である社長や経営陣が保有することが多くなります。
そして第三者がある会社を欲しい場合は、その会社の株式の半分以上を入手することで、会社の経営権を手にすることができます。
これが会社の買収やM&Aと呼ばれるものです。
また多くの株式を保有する会社の経営陣が、資金難などにより経営権を譲渡することを前提で、保有する株式を第三者に売却することは、会社の身売りと呼ばれます。
ただ、株主の側は必ずしも会社経営に参加する義務はなく、配当や投資が目的で株を買った場合は、他の株主などに会社の経営に関する権限を委任することもできます。
配当や株式優待、値上がり時の売却が目的で株式を購入し、経営には関わらないことも十分に可能です。
「株で儲ける」とは、一言で言えば、会社の経営権ではなく利益を得ることを目的にして、会社の株主になることをいいます。
株主が株で利益を得る方法には、基本的に「配当」と「値上がり益」があります。
会社側は、業績が好調で利益が出たときは、すべての株主に対して株の保有率に応じた利益を還元します。
これが「配当」と呼ばれるもので、この還元率は会社の業績に合わせた配当額が、一株あたり株価の何%になるという指標で、配当利回りと呼ばれます。
1株10000円の株で配当が200円の場合、配当利回りは2%です。
その株を50株所有していれば10000円の配当、1000株なら20万円の配当利益を得られることになります。
この配当金を出す時期や回数は企業によって違いますが、通常、日本では本決算と中間決算の、年に1回か2回であることが多くなります。
ただし、会社の業績が悪化して決算が赤字だった場合、配当利益は出ません。
また発展途上にあるベンチャー企業などでも、出た利益を会社の次のビジネスに向けて投資するため、経営が安定するまでは配当が出ないことがあるので注意が必要です。
この配当金を得るには、会社の決算日より、3営業日前に株式を所有していることが必要です。
そしてもうひとつの利益が、購入時より値上がりした株を売却する「値上がり益」です。
会社の業績が好調で配当利回りが高くなると、その会社の株は株式市場で高く評価され、売り値が上がります。
1株10000円で買った会社の株が、業績好調につき15000円に値上がりした時に売却すれば、購入価格に比べて500円×株式数の利益を得ることになります。
このため値上がりする銘柄を予測して購入し、値上がりした時に売却することを繰り返すのが株取引の基本です。
特に一日単位で株価の推移を予測して、株式の購入と売却を繰り返して利益を得る手法は、デイトレードといわれます。
株式会社とは、17世紀の大航海時代、航海という大事業を行う会社と資金を提供する資産家が、互いにリスクを避けるために始まった制度で、現在でも生かされています。
この株式は、会社側にとっては運営資金を集めやすく、株主側にとっては、会社の業績が順調な限り安定した配当を受け取ることができます。
また事業が破綻しても、株式の購入額以上の大きな損害を受けないという、双方にとってメリットの高いシステムです。
さらに現代では、株式そのものが投資商品としても重宝されています。
値上がりが見込める株式を購入し、値が上がったときに売却する。
株式投資の基本はそれだけのシンプルなものです。
ただ、確実に利益を出すためには、その会社の業績や、政治、経済などの動向の変化まで、さまざまな情報から、今後値上がりする株を予測する判断力が必要になります。