資産形成
2022.12.13
資産形成を行う一部の投資家の中には、「先進国債券に投資することは不要である」と言う人が少なくありません。
また、いくつかの投資専門誌を見てみても、株式投資や投資信託といった投資先をポートフォリオに組み込んでいるものの、先進国債権には手を出していない人も多くみられます。
この記事では、なぜ先進国債券への投資が不要と言われてしまうのかについて、考えられる二つの理由をご紹介します。
合わせて、先進国債券を自身のポートフォリオに組み入れた方がいい人の特徴についても解説します。
「多くの人が言っているから先進国債券に投資をしない」という判断をするのではなく、しっかりと先進国債券の特性を理解した上で投資判断を行いましょう。
先進国債券について理解する前に、「先進国」という言葉の意味を改めて理解しておきましょう。
株式投資の世界において、「先進国」という言葉は『比較的財政が安定している国』のことを指しています。
具体的な国名でいうと、アメリカ・イギリス・欧州・カナダ・オーストラリア・日本といった国が挙げられます。
対になる言葉として、「新興国」という言葉もあります。
新興国は『これから高い経済成長が期待できる国』のことを指しており、国としてはブラジル・インド・中国・南アフリカなどが挙げられます。
基本的に先進国以外は全て新興国という扱いになっていることも合わせて理解しておきましょう。
2008年に起きたリーマンショックを皮切りに世界的に金利は低迷してきました。
特に我が国の国内債券(10年)は2018年から2022年までで0.2%前後を推移する水準となっており、投資してもほぼリターンとして返ってこないといった特徴があります。
それに比べて外国債券はリターンが高く、米国債券(10年)は2018年から2022年までで最高4%程度までの金利となっています。
外国債券の投資効率が高いことが分かる例と言えるでしょう。
先ほどの言葉の定義で触れたように、先進国は新興国に比べて財政が安定していて信用力があるため、先進国債券の安全度は高く安心して償還を待つことができます。
ただ、安全ゆえに新興国債券のような高金利が期待できませんが、日本国債に比べれば金利は高く設定されています。
【債券の金利イメージ】
・日本国債:0.05%〜
・米国債券:2.0%〜2.99%
・ハンガリー国債:9.0%〜
※執筆時点の楽天証券公表マーケット情報を参考に記載
日本以外の先進国債券に投資する際に注意しなければならないのが、為替変動リスクという観点です。
基本的に先進国の場合、外国為替に変動相場制を採用しているため、日々為替レートが変動している状況です。
先進国債券を購入して満期を迎えたあとは日本円に換金する必要がありますが、円高になっていればそれだけで損失が発生してしまいます。
もちろん円安になっていれば利益になるわけですが、債券価格や利回りに関係なく損益が発生するため、投資初心者にはやや扱いが難しいと感じるかもしれません。
為替リスクについては、先進国債券のみならず、外国株や海外ETFなどの投資商品でも発生するものです。
もし為替変動による損失を生じさせたくない場合は、為替ヘッジありの投資信託を選択することにより、為替影響を低減できますので合わせて知っておきましょう。
資産形成をする上で、選択できる投資商品はたくさんあります。
しかし、先進国債券を含む、債券投資そのものが不要だという投資家の声も少なくありません。
債券への投資が不要だと言われる理由としては、大きく2つが挙げられます。
もちろん全ての投資商品にメリットとデメリットの両面が存在しますが、ここでは先進国債券を含む債券投資が不要と言われる理由について詳しくご紹介していきます。
投資の世界においてリスクはつきものですが、リスクの大きさに比例してリターン(収益)の大小が変わってくる傾向にあります。
投資商品の種類とそれぞれのリスクリターンの関係をまとめると、以下のようになります。
投資商品の種類 | リスク | リターン | 利益内訳 |
債券 (国内・外国) |
低 | 低 | あらかじめ決められた利子 |
銀行預金 | 低 | 低 | あらかじめ決められた利息 |
株式投資 | 中 | 高 | 値上がり益+配当金 |
投資信託 | 中 | 中 | 値上がり益+配当金 |
iDeCo | 低 | 低 | 値上がり益 |
FX | 高 | 高 | 為替差益 |
不動産投資 | 高 | 高 | 賃料(+不動産売買益) |
債券は、国内債券・外国債券問わず、基本的に債券の発行元が破綻しない限り、最初に投資した元本はその額面とともに満期を迎えたら返金されます。
安心できる発行元であればあるほど、ほぼ必ず満額で返ってくると言われていますので、非常にリスクが低いものの、得られるリターンが少ないのが現実です。
また、満期で返ってくるのは投資元本となる金額であり、それと合わせてあらかじめ決められた利子が支払われます。
利子は銀行預金などと比べれば高く設定されているものの、株式投資や投資信託などの商品と比べるとリターンはそこまで高くありません。
資産を増やすことだけを考えるのであれば、多少リスクが上がりますが株式投資の方が効率がいいということは間違いないでしょう。
中長期的に資産形成をする場合は積立NISAを活用した投資信託も検討すべきです。
加えて、リーマンショック以降金利が下がっているマーケット市場から考えても、債券投資のみで資産運用を行なっていくのはあまりおすすめできません。
繰り返しになりますが、資産を増やすことだけを目的とするのであれば、株式投資や積立NISAによる投資信託を活用した運用の方が、目標とする資産額を達成できる可能性が高いと考えられます。
積立NISAで資産形成をする時のポイントを知りたい場合は、「積立NISAはほったらかしでも大丈夫?定期的にチェックすべきポイントを解説!」の記事も合わせてご覧ください。
日本国外の先進国債券に投資する場合は、米ドルをはじめとした外貨建てで運用されることになります。
為替は常に変動しており、例えば1ドル=100円で10,000ドル(日本円支払い額は100万円)購入して米国債券に投資した場合、為替変動によって以下のように為替損益が発生します。
・1ドル=110円の円安になった場合:110円×10,000ドル=110万円になり、10万円の為替差益が発生
・1ドル=90円の円高になった場合:90円×10,000ドル=90万円になり、10万円の為替差損が発生
米ドルだけでなく、外貨建てで運用される投資商品には全て為替変動リスクがつきまといます。
また、為替の変動は誰にも読むことはできず、流れを掴むことも難しいため、ある意味リスクを享受しなければならないと言えるでしょう。
為替の影響により、投資した債券自体の価格や安全性に問題がなかったとしても、為替の変動状況によっては実質的に損失になることも十分考えられます。
加えて、為替変動の影響だけで金利によるリターン分がほぼなくなってしまうこともあり得るでしょう。
このように自分ではコントロールできない為替変動リスクを嫌い、先進国債券に投資をしないという選択をする人も少なくありません。
為替変動リスクのない資産形成をする場合は、必然的に日本国内株式や国内債券に投資を検討することになります。
もちろん日本円にのみ投資をすることのリスクも別で存在するのですが、少なくとも為替によって勝手に損益が生じてしまうことからは解放されます。
ここまで解説してきましたが、先進国債券が投資先としておすすめできないということではありません。
資産形成を中長期かつ安定的に行なっていきたい場合、投資商品の種別も分散することが非常に重要になってきますし、債券自体の安定性は魅力的です。
先進国債券を自身のポートフォリオ(運用商品の組み合わせ)に組み入れるべきかとうかは、投資する個々人の資産運用に対する目標や考え方によって異なります。
具体的に、次のような考えを持つ方は先進国債券への投資をおすすめします。
・資産を増やすことよりも、安定性を優先させたい人
・資産の目減りは避けたい。資産の保全を目的としている人
・リスクをできるだけ抑え、バランスよく資産運用したい人
健全な資産運用をしていくために、分散投資は非常に重要な要素と言われています。
株式投資のみで運用を行なっていくと、とうしても価格変動リスクに対処しきることはできません。
また、債券は株式と反対の値動きをする傾向にあるため、仮に株式の値下がりを受けたとしても、債券の値上がりでリスクヘッジに繋がることもあります。
資金が必要になるタイミングで適宜株式から債券に切り替えるなど運用すれば、総資産も安定させられるでしょう。
全体のポートフォリオの割合を加味しつつ、先進国債券への投資も検討してみるようにしてください。
先進国債券への投資は不要という声もありますが、分散投資という観点や安定的なリターンを得られるという点で債券投資は株式投資には無い価値を持っています。
自身のリスクへの考え方、ならびにどのように資産形成をしていきたいのかをしっかりと整理した上で、先進国債券への投資の必要性を今一度考えてみましょう。
なお、資産形成は債券投資以外にも様々な種類が存在します。
どのような資産形成手段があるのか、選択肢を十分に知っておきたいという方は「資産形成RANKING」のサイトもチェックしてみてください。