iDeCoって元本割れする可能性あるの?手数料やタイプ別に解説します

iDeCo

2022.11.16

2022.12.12

  • ideco 元本割れ

    将来の資産形成の担い手が国から個人へ移行しつつあるこの時代に、「iDeCo(個人型確定拠出年金)」を活用した資産形成を検討される方も多いのではないでしょうか?
    iDeCoをうまく活用し、資産を運用してあげることで、所得税面でのメリット・運用益に対するメリット・受け取り時のメリットといった3つのメリットを享受することができます。
    しかし当然、資産を運用するわけですので、発生しうるリスクについても考慮しなければなりません。今回は、iDeCo(個人型確定拠出年金)のもつリスクのうち、「元本割れ」について解説します。「“年金”なのに元本割れするの?」や「どんな仕組みで元本割れになるの?」といった疑問をお持ちの方にお読みいただければ幸いです。

    そもそもiDeCoとは?

    idecoとは
    では、iDeCoの元本割れの概要を知る前に、そもそもiDeCoとは何なのかおさらいしてみましょう。iDeCo(個人型確定拠出年金)とは読んで字のごとく、「個人で決まった金額を拠出し、年金を形成する制度」です。平たく言うと「毎月決まった金額をお給料から払い出して、将来自分が受け取る年金を自分でつくろう」といった、厚生労働省管轄の私的年金制度の一つです。あくまで制度の名称であって、iDeCoという商品があるわけではないことに注意してください。この制度を用いて資産運用商品を購入し、自分だけの年金を形成してくことが目的となります。国民年金や厚生年金も、皆さんから集めたお金を運用し、皆さんの年金を形成しているわけですが、iDeCo(私的年金)と国民年金・厚生年金(公的年金)の大きな違いは、“自身で運用商品を選択できるか”といった点にあります。iDeCoは自分だけの年金なので、自分のお金を何で運用するのかを、自分で選択することができます。また、国がiDeCoでの資産形成を勧めていることもこともあり、iDeCoを活用した資産運用には、従来の資産運用にはない大きな税制メリットが用意されています。

    1.積立時のメリット・・・拠出掛金は全額所得控除
    iDeCoの掛金(自身の所得から拠出したお金)は、その全額が所得控除の対象となります。
    自身の所得をiDeCoの掛金として拠出することで、掛金分の所得を圧縮することができるので、結果として所得税の節税効果が見込まれます。

    2.運用時のメリット・・・運用益にかかる税金がゼロ
    通常、資産運用の結果利益を得ると、その利益(運用益)から20.315%の税金が引かれ、残りが自身の本当の利益となります。iDeCoを活用することで運用益への課税がなくなりますので、資産運用商品の運用結果を100%享受できます。

    3.受け取り時のメリット・・・退職所得控除/公的年金等控除の対象
    iDeCoを活用し形成した自分の年金は、60歳以降から受け取ることができます。受け取り方法は“一括受け取り”か“年金受け取り”を選択することができ、一括受け取りの場合は「退職所得控除」が、年金受け取りの場合は「公的年金等控除」が適用されます。どちらを選択しても、自身の所得を圧縮することができますので、税負担を軽減させることができます。

    iDeCoで元本割れする可能性

    ideco 元本
    iDeCoを使った資産運用の話になると、「国がやってることだから損はしないよね」や「リスクなしで元本割れなし、メリットしかない」といったお声を聞くことがありますが、それは大きな間違いです。大前提としてiDeCoとは、「金融商品を用いた資産形成における税制優遇制度」なので、損失を補填したり、運用のリスクを排除したりする機能は持ち合わせていません。資産運用による利益を高める制度であることに十分留意してください。

    また、繰り返しにはなりますが、iDeCoを利用するということは、“優遇制度を用いて金融商品を購入すること”だとの認識を忘れないでください。金融商品の価値は当然変動しますので、望まない運用結果になれば、資産が減少することもあります。

    金融商品の価値変動以外にも、iDeCo利用時に発生する元本割れというものがあります。それが、「iDeCo利用にかかる手数料による元本割れ」です。iDeCoを利用する際には手数料がかかるんですね。仮に、iDeCoを使って自身が選んだ運用商品が、わずかながらの運用利益しか生むことができなかったとしましょう。そのわずかな運用益が、iDeCo利用にかかる手数料より少なかった場合、元本割れが発生します。皆さんも、もらう給料(=運用益)より、使う生活費(=iDeCo手数料)のほうが多ければ、赤字となってしまいますよね。では、iDeCoの手数料について詳しく内容を見ていきましょう。

    iDeCoの手数料とは?

    ideco 手数料
    前章を見て、iDeCoの手数料に対してネガティヴな思いを持たれた方もいらっしゃるかもしれませんが、制度運営にはお金がかかるものなので、当然の手数料として捉えてください。また、後述しますが、iDeCo運営には様々な登場人物がいて、円滑かつ有益な制度運営のため手数料負担を皆さんと分割しているとご理解ください。

    1.加入時
    【加入時・移換時手数料】
    ○支払先 国民年金基金連合会
    ○金額  2,829円
    iDeCo加入時や、企業型DCからの移換時に発生する手数料で、最初の掛金からの差し引きとなるケースが一般的です。また、この手数料はどの金融機関でも一律ですが、運営管理機関によっては別途手数料が発生する場合があります。

    2.運用時
    【収納手数料】
    ○支払先 国民年金基金連合
    ○金額  105円/月
    国民年金基金連合が、掛金の引き落としを行う際に発生する手数料で、こちらも全金融機関で一律の金額です。

    【事務委託先金融機関手数料】
    ○支払先 信託銀行
    ○金額  約66円/月
    集まった資産を、信託銀行が管理する際の手数料です。こちらは約となっていますが、ほぼ共通の金額です。

    【口座管理手数料】
    ○支払先 運営管理金融機関
    ○金額  約0~450円/月
    こちらは、各金融機関が資産運用口座を管理するための手数料で、金融機関によって差の大きな部分です。

    3.給付時
    【給付事務手数料】
    ○支払先 信託銀行
    ○金額  440円/給付の都度
    こちらは資産を管理している信託銀行へ支払いが必要な手数料で、一律の金額となっています。
    以上、iDeCo利用時にかかる代表的な3つの手数料をご紹介いたしました。他にも、iDeCoの加入金融機関を変更する際の「移管手数料」や掛金の払い戻し時に発生する「還付手数料」、iDeCo脱退時の「脱退手数料」などありますが、合計すると年間で2,050~7,500円程度の手数料が発生すると考えたほうがいいでしょう。国民年金基金連合、事務委託先金融機関(信託銀行)、運営管理金融機関(口座管理金融機関)、そして金融商品の運用機関(投資会社)が皆さんの年金を形成するために、iDeCo運営として動いているのですね。

    iDeCoのタイプについて

    ideco タイプ
    「iDeCoで元本割れする可能性」の章では、iDeCoの運用益が手数料を下回った場合に元本割れが発生することについてご説明しました。「iDeCoの手数料」の章では、具体的に手数料がどれほど発生するのかをご覧いただきました。この章では、iDeCoのタイプ「元本確保型」「元本変動型」について説明します。

    元本確保型

    定期預金・保険を投資商品として、積み立てた元本が確保される運用タイプです。あくまでも積み立てた元本を確保するものなので、運用以外の要因による元本の毀損リスクは排除されません。

    元本変動型

    投資信託を投資商品として、元本の確保はないものの運用益を追求するタイプです。投資信託は国内外債券型・国内外株式型・REIT型・バランス型などさまざまな投資先を持っていることが特徴です。もちろん元本の変動リスクを持ちますので、元本毀損の恐れがある反面、高い運用益を期待することができます。運用益に対する税制優遇制度であるiDeCoとは相性の良い運用タイプと考えることができます。

    ここで、「元本確保型」についてもう少し詳しくご説明します。
    「元本確保型」は定期預金・保険に投資する事で元本の確保を目的とした運用を行います。しかし実態としては、元本が割れるケースがあるということを説明してきました。具体的には、以下のようなケースが想定されます。

    ・運用商品を変更し、解約控除金が発生するケース
    元本確保型が投資対象とする保険は、契約時点で満期到来時の受け取り金額を確定させます。
    受け取り金額が確定する一方、満期を迎えずに解約してしまった場合は、違約金のような「解約控除金」がかかってしまします。iDeCoの運用内容を見直すこととなり、運用商品を変更する事態が発生すると、この解約控除金の支払いにより元本を割り込む可能性があります。

    ・運用にかかる手数料を、元本確保型の運用益が下回るケース
    iDeCoの利用には、最低でも年間で2,050円ほどの手数料負担が発生します。この手数料をまかなうほどの運用益を、元本確保型の運用で得られるのでしょうか。
    現在、国内金利は低迷しており、銀行の定期預金金利は0.002%程度です。同じく元本確保型iDeCoの投資対象である保険の利回りも、0.5%程度で推移しています。仮に定期預金6:保険4の割合で100万円を運用すると、単純利回りで2,027円の利息を受け取ることができます。これをiDeCoの手数料と比較してみましょう。▲23円の赤字であることが分かります。もちろん単純な計算のみですので、実際の運用結果と異なる場合もありますが、利益を得ることは非常に難しいことが伝わったのではないでしょうか。

    ここでご説明したように、元本確保型は、手数料などの要因により元本を割り込む可能性を十分にもっています。また、元本の確保に成功した場合でも、資産価値の減少には対抗できないと考えることが出来ます。iDeCoで拠出し積み立てた100万円が、元本を確保したまま10年後に100万円として給付されたとしましょう。この100万円は、物価上昇の影響により、10年前の100万円の価値を持ちません。最近も飲食店などの値上げが相次いでいるように、インフレに対応するためには、元本を確保するだけの運用では不十分だということは皆さんもご理解いただいていることかと思います。

    当記事で合わせて読んで欲しい記事をご紹介します。
    iDeCoはスイッチングしても大丈夫?配分変更との違いやデメリットを解説
    iDeCoは途中で解約できない?やめたいと思った時にできることを紹介!

    まとめ

    今回の記事では、iDeCoの手数料や、元本確保型の運用について解説させていただきました。
    内容を簡潔にまとめると

    • iDeCoは利用するだけで手数料がかかる
    • 元本確保型とは言うが、手数料等の影響で元本を割り込むケースがある
    • インフレに備えるためにも、iDeCoのメリットを十分に利用しよう

    といったところでしょうか。
    活用の仕方によっては相応の資産形成効果がある制度です。うまく使って、上手に老後の生活に備えましょう。

    おすすめの投資手法をご紹介していますのでもし宜しければご覧ください。
    【最新版】資産形成ランキング

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