メルカリへの身売りを発表したスマートフォン決済のオリガミの譲渡価格は1株1円だったことが6日、分かった。オリガミは売却に当たり、社員185人のうち約9割にあたる160~170人規模のリストラを実行する。キャッシュレス決済のフロントランナーだった同社は競争激化により、事実上の経営破綻に追い込まれたかたちだ。(ダイヤモンド編集部 田上貴大)
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● 事実上の経営破綻 フィンテック・バブルの崩壊か
スマートフォン決済の老舗であるOrigami(オリガミ)は1月23日、フリマアプリ大手メルカリのスマホ決済子会社であるメルペイに会社を丸ごと売却すると発表した。両社は売却価格を非公表としたが、複数の関係者は1株1円だったことを明らかにした。同社の株数は259万株であるため、譲渡価格は総額約259万円だったことになる。
日本経済新聞社が発表した「NEXTユニコーン調査」では、オリガミの企業価値は417億円と算定されており、今回の売却価格は市場評価を大きく下回ったことになる。金融関係者は「フィンテック(金融とITの融合)・バブルの崩壊」と語った。
複数の関係者によると、オリガミは売却発表と同時に社内向けに大規模な人員削減策を公表。社員185人のうち約9割にあたる160~170人規模のリストラ策に踏み切る。大半の社員は1月末が最終出社となり、2月末で退職になるという。これは事実上の解雇に当たるが、今回のメルカリへの売却は実質的な経営破綻となるため、「人員削減の必要性という項目に該当し、いわゆる整理解雇の位置付けだ」と関係者は明かした。
ダイヤモンド編集部の取材に対し、譲渡価格についてメルカリの広報担当者は「非公表のためノーコメント」とし、リストラの人数についてはオリガミとメルカリの両広報担当者共に「両社が最大に強みを発揮できる適切な人員配置を検討している」と語るにとどめた。
● 経営陣はスポンサー探しに 奔走するも雇用守れず
オリガミはコスト面の負担が大きい一方で収益が追い付かず、1月中旬の段階で「残り数週間で資金がショートするレベル」(関係者)だった。
康井義貴社長をはじめ、オリガミ幹部は資本調達に走り回ったが、出資先が見つからずに八方ふさがりとなり、最後にたどり着いたのがメルカリだった。康井社長は1株1円という破格での売却の代わりに従業員の雇用維持を申し入れたが、従業員の削減が「メルカリからの買収条件だった」(オリガミ元社員)という。
日本企業では、買収元が買収先企業の従業員の大リストラに着手する事例は少ないが、「スタートアップの救済であれば妥当だ」とベンチャーキャピタル関係者は指摘する。
● 新興スマホ決済に押された “老舗”のオリガミ陣営
オリガミがしのぎを削っていたキャッシュレス決済の分野は、官民一体による推進と消費増税の緩和策として取られたポイント還元制度などを追い風に、多数の新規プレイヤーの参入が続いていた。
中でもオリガミは、2012年創業でいち早くキャッシュレス決済に進出した業界のフロントランナー。信用金庫の中央銀行としての役割を担う信用中央金庫と資本業務提携を結び、地方の加盟店開拓にも取り組んでいる。
だが、ソフトバンクグループ傘下の PayPay(ペイペイ)は、消費者還元キャンペーンを繰り返して顧客を拡大。加えて、ヤフーとLINEの経営統合によりLINEPayの顧客基盤が加わることなった。PayPayの加盟店数185万カ所に対して、オリガミは約19万カ所にとどまり、すでに大きく劣後している。
レガシー(負の遺産)を抱える銀行や証券会社など従来の金融プレイヤーがサービス改革に出遅れる中、イノベーターとして勃興してきたフィンテック・ベンチャー。「これまでは、赤字でも粗利益さえ増やせば資金は後から付いてくるというビジネスモデルだったが、大きな転機に差し掛かっている」と話す金融業界関係者もいる。
現在、多額のリスクマネーがフィンテック・ベンチャーに流れているが、今後はより一層スタートアップの真贋が問われる。
引用:DIAMOND online
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