ブラジルのユニコーン企業、世界最大のデジタル銀行「Nubank」が米国ナスダック市場への上場を計画していると、ロイター通信が報じた。上場後の時価総額は、ブラジル最大の民間金融機関イタウ・ウニバンコ銀行の550億ドル(約6兆円)を超えるとも言われており、実現すれば世界最大規模のフィンテック企業が誕生することになる。
現在、モルガン・スタンレーやゴールドマンサックス、シティグループなどがIPO支援を行っている。Nubank側は上場についてノーコメントを貫いている。
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■「投資の神様」バフェット氏が出資
今年6月、米著名投資家ウォーレン・バフェット氏の投資会社バークシャー・ハサウェイがNubankに5億ドル(約550億円)を出資したと報じられた。同社は他の投資家からも2億5000万ドル(約280億円)を調達し、企業価値は300億ドル(約3兆3000億円)に達した。これにより同社はフィンテック業界でトップ企業の仲間入りを果たす。
Nubankの共同創業者でCEOのDavid Vélez氏は、今年3月にバフェット氏との交渉を始めた際、Nubankの成長スピードや新たな保険事業が高く評価されていたと語っていた。2020年末のデータによると、Nubankのユーザーは1日に約4万人増加しているものの、集客コストはほぼゼロに抑えられている。
度重なる資金調達と事業拡大はNubankの上場が間近であることを暗に示している。今年4月初め、ロイター通信は同社がすでに米国上場に向けた準備に着手しており、早ければ今年末にもIPOに踏み切ると伝えた。
注目すべきは、2018年10月に当時の時価総額40億ドル(約4400億円)だったNubankに、中国IT大手のテンセントが1億8000万ドル(約200億円)を出資し、約5%の株式を取得していたことだ。
調査会社CB Insightsがまとめた世界ユニコーン企業ランキングによると、Nubankは評価額で第7位につけている。
■高金利のブラジル金融業界に風穴
CEOのVélez氏は2012年にスタンフォード大学を卒業後、セコイア・キャピタルのパートナーとして南米の投資業務を担当するようになる。しかし当時の南米市場は振るわず、ちょうど米国がフィンテック創業ブームで多くの企業が巨額の資金獲得に成功していたことから、Vélez氏も自ら創業することを決める。
まずVélez氏は手数料が高く、サービス効率の悪いブラジルを選び、低コストのバーチャルカードで市場に参入した。長年にわたりブラジルでは貯蓄資産やローンの8割以上を五大銀行が掌握し、他国に比べてはるかに高い借入利率が設定されてきた。クレジットカードによっては年利が450%に上るケースもある。
このためNubankは2014年にクレジットカード事業を開始する。スマホ上で簡単に操作でき、年会費無料、年利145%など他にはない強みで急速に市場を拡大し、その後もローンやオンライン保険などの事業を展開した。
目下、Nubankの主な収入減は依然としてクレジットカード事業だ。カード決済1件につき決済金額の2~3%をサービス料として事業者から徴収するほか、クレジットカード利用者からの利息で収益を得ている。クレジットカードの金利は1カ月2.75~9.99%と、ブラジルの平均月利13.9%よりずっと低い。
2020年第3四半期時点で、Nubankはブラジルのクレジットカード市場で約5%のシェアを占めるに至った。2020年末にはクレジットカードの決済総額が187億ドル(約2兆円)に達し、全事業の売上高は10億ドル(約1100億円)だった。
現在はメキシコやコロンビアなど他国での事業展開も模索している。最新データによると、Nubankの南米ユーザーは4000万人に上り、発行したデビッドカードの枚数はブラジル最大手のイタウ・ウニバンコ銀行を超えた。
創業から8年、Nubankは風通しの悪いブラジルの銀行業界に旋風を巻き起こしてきた。果たして新たなルールメーカーとなれるのか、Nubankのストーリーはこれからも続く。
(翻訳・畠中裕子)
引用:36Kr Japan
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