米国の格付け会社ムーディーズは7月15日、フィリピンでフィンテック企業やデジタル銀行(注)が個人向け金融サービス分野の大きな成長可能性を有していると発表した。また、既存の銀行はデジタルサービスの導入・開発が遅れている点を指摘し、フィンテック企業が銀行に対して市場開拓の面で優位にあるとした。
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2019年にフィリピン中央銀行(BSP)が行った調査PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)によると、同国では成人人口の約71%が金融口座を有しておらず、多くの人々が金融サービスを十分に享受できていない状況にある。ムーディーズによると、デジタル技術を活用することで、金融口座を保有しない人々が金融サービスを利用しようとする際の障壁を緩和するとともに、サービス自体の利便性が高まるため、フィンテック企業は市場開発を有利に進め、事業を収益化できる。加えて、新型コロナウイルス感染拡大の影響でソーシャルディスタンスを確保する施策が取られていることも、デジタルな金融サービスの浸透を促す効果を有するだろうとムーディーズはみる。フィンテック企業が優位性を有する個人向け金融サービスの例として、同社はクレジットカードと送金を挙げている。
フィンテック企業によるデジタル銀行設立の動きも
フィンテック企業による顧客開拓の動きは既に進展しつつある。その一例が、フィリピンのフィンテック企業ボイジャー・イノベーションが運営する電子ウォレットサービス「ペイマヤ」だ。新型コロナ感染拡大以降、非接触型決済サービスに対する需要が急速に高まった。そうした状況の中、ペイマヤの利用登録者数は急激に増加し、6月時点で約3,800万人と、成人人口の半分以上を占めるに至った。6月28日には、ボイジャー・イノベーションはデジタル銀行設立と同社サービスのさらなる拡充を見据え、フィリピンの大手通信事業者PLDTや米国の投資会社KKR、中国IT大手の騰訊科技(テンセント)、世界銀行グループの国際金融公社から計1億6,700万ドルの資金調達を新たに行ったと発表した。
(注)デジタル銀行とは、物理的な支店を持たずに、金融商品・サービスをデジタルな方法によって提供する銀行の類型を指す。フィリピン中央銀行は2020年12月、同類型を新たに導入した。
(吉田暁彦、サントス・ガブリエル)
引用:jetro
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