日本郵政との提携で楽天携帯が「一気に突き抜ける」可能性


菅政権の目玉政策である携帯料金の値下げが動き出した。総務省の接待問題が国会で議論される中、携帯料金値下げ問題も取り上げられ、世の中の関心は高い。

しかし大手3社と楽天の間で繰り広げられている値下げ競争の本質はほとんど語られていない。

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◆勝負に出た楽天

2021年1月、NTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンクの携帯大手3社の料金値下げプランは、5分以内の通話を含めて20GB(ギガバイト)で月2980円と、事実上横並びになった(ドコモはその後、200円の追加値下げを発表)。3社のプランはいずれもインターネットでの申し込みしか受け付けず、若者を対象に考えられたプラン。3社の大部分のユーザー、特に中高齢者のユーザは対象外の値下げプランだ。

このプランは、昨年4月からサービス開始した楽天の均一料金と同額の2980円に設定し、楽天と同じ水準の低料金にしたとの印象を与えることを狙ったので、「楽天潰し」の新プランと呼ばれる。

3社の動きを受けて楽天が4月からスタートすると発表した値下げプランは、使用したデータ量に応じて自動的に料金が計算される。「データ使用量が0~1GBは月0円」、「1~3GBは980円」、「3~20GBは1980円」「20GB~は無制限で2980円」だ。

この楽天の新プランは2つの点で大手3社に衝撃を与えた。まず20GB以上の大容量を利用する大手3社のユーザは、ほぼ横並びで月6600円支払っているが、3社は楽天に対抗できる大容量の値下げプランを発表していない。そのため、楽天の大容量料金は大手3社の半額以下になった。

次に7GB以下の小・中容量の料金についても大手3社は値下げプランを発表せず、各社とも3000~6000円の現行料金を継続する。このため楽天の小・中容量料金は大手3社の半額どころか3分の1から5分の1の水準まで安くなった。

ではなぜ大手3社は小・中容量の料金を値下げしないのか。大手3社のユーザの半数近くは小・中容量を契約していると言われ、この契約者層は中高齢者も多く物言わぬサイレント・マジョリティーだ。

この小・中容量の契約者は契約が2年ごとに自動更新されていることに気づかず、実際には1GBも利用していないのに、月数千円の携帯料金を何年も払い続けてきた人たちだ。言わば大手3社の最優良顧客なので、彼らには黙って使い続けてほしいのだ。

◆楽天モバイルに乗り換えてみた

筆者もかつて大手携帯会社のスマホを利用し、毎月7000円の携帯料金を支払っていたが、5年ほど前にテレビCMで格安携帯を知り、大手携帯会社の子会社である格安携帯会社に乗り換えた。6GBで4000円のプランを契約したが通信品質に問題もないので5年間使い続け、携帯料金が安くなった実感があった。そして、今年2月、楽天モバイルのCMを見てその料金に衝撃を受け、ネットで最寄りの楽天モバイルのショップを探して訪問した。

そこで、「楽天に乗り換えるのは容易でない」ことを肌で感じることになった。それは以下の2つが原因だ。

①店舗数が少ないこと。

楽天モバイルは現在約600店舗を展開しているが、大手3社が各2000店舗展開しているのと比べると圧倒的に少ない。筆者は最寄りの店舗まで車を1時間運転した。ただ、大手3社の割引きプランがインターネット申し込みしか受け付けないのに対し、楽天は筆者のような高齢でICTに弱い者でも対応してくれ、1時間で手続きは終わった。

②基地局増設工事の真っ最中であること。

今年夏までに人口カバー率を96%まで高めるようだが、自宅のあるエリアがカバーされているのか、自宅に戻って携帯の電源を入れるまで分からず不安だった。ただ楽天でカバーしていなくてもauのネットワークでつながる(パートナー回線エリア)から心配はないが、このエリアで使用量が5GBを超えると通信速度が落ちるので注意が必要だ。もちろん料金は最大でも2980円で済む。現在4000円以上の携帯料金を支払っているなら、10000円の解約金を払っても数カ月でペイするはずだ。ちなみに私の通信料金は0円になった。

大手3社と楽天の値下げ合戦の最中、3月12日に日本郵政と楽天は資本・業務提携を発表した。

郵便物の減少の結果、郵便・物流事業の減収減益が続く日本郵政は、楽天市場の宅配便を取り込み、ゆうパックの取り扱いを増やしたい。

携帯大手3社との競争で基地局設置を急ぎたい楽天は、全国に郵便局を展開する日本郵政の支援を受けたい。両社は,物流分野での共同事業、楽天モバイルの事業支援、日本郵政グループのDX推進の3点を強化することで一致した。

「楽天モバイル」での協業

今回の提携で日本郵政は1500億円を楽天に出資する。他の出資者も合わせると合計2400億円の資金を楽天は調達できたが、これは楽天モバイルが基地局建設に多額の投資を必要としているからだ。今回の提携は設備投資の面で楽天モバイルの不安要素をなくし、楽天の基地局工事を加速させる。

郵便局は全国に2万4千あり、その屋上などに楽天モバイルで運用する無線基地局(アンテナ)を設置する計画だ。これにより楽天は自社回線のカバーエリア拡大を大幅に前倒しする。また郵便局内のスペースに楽天モバイルの申し込みカウンターを設置し、郵便配達の職員が楽天モバイルの広告宣伝も行う。

郵便局の活用にあたって、値下げ合戦の蚊帳の外に置かれた大手3社のサイレント・マジョリティーを楽天が意識していることは明白だ。彼らにとってネットでの申し込みのハードルは高いが、最寄りの郵便局で担当者と話ができればハードルはぐんと下がる。データ利用の少ない高齢者などにふさわしい料金プランを説明をすることも容易になる。

大手3社と楽天の競争の展望

楽天は20年12月期の決算で、前期の▲318億円から▲1142億円へと最終赤字が拡大した。赤字の主因はモバイル事業で、基地局設置の前倒しなど先行投資負担がかさんだ結果、同事業の営業赤字は前の期から▲765億円増加し▲2270億円となった。今後、年2000億円規模の投資が続くと見られており、投資負担は引き続き重い。

一方、既存事業は好調で、20年12月期の売上は前期比15%増の1兆4555億円と過去最高を更新した。物販サイト「楽天市場」の流通総額は初めて3兆円を突破し、国内EC事業の営業利益は13%増加して581億円。クレジットカードや銀行、証券などのフィンテック事業の営業利益も17%増加して812億円となった。好調な既存事業で携帯事業の赤字を補いながら楽天経済圏を拡大していけるか、三木谷CEOの経営手腕が問われる。

日本郵政の株式の過半は国が握っており、今回の提携に政府の意向が働いたことは想像に難くない。国会論戦でも競争を通じて携帯料金を大幅に値下げする菅首相の方針は揺るがなかった。

郵便局が楽天モバイルのショップに追加されることで、大手3社の10倍以上の営業拠点が誕生する。これが全国一斉に営業攻勢をかければ、楽天モバイルが日本一の携帯会社になることもまんざら夢ではなさそうだ。

引用:FRIDAYデジタル

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