仮想通貨とデジタル資産への規制適応


筆者であるキース・ベア氏はケンブリッジ大学のジャッジビジネススクールにあるCCAF(ケンブリッジオルタナティブ金融センター)の研究員だ。以前、米IBM社のフィンテック主任を担っていた。

過去2年間におけるICO(イニシャル・コイン・オファリング)の発生と衰退、仮想通貨価格の急上昇、分散型金融の出現、そしてリブラ<LIBRA>の発表と、われわれは数々の世界各国におけるデジタル資産のトレンドを目の当たりにしてきた。規制の適応は統一性がなく、従来の金融サービスを基準とすると比較的早いのかもしれないが、仮想通貨業界を基準とすると反応が遅いことも恐らく驚くべきことではない。

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現状と展望を観察するにあたり、まず仮想通貨とデジタル資産の区別を明確にするのが良いだろう。CCAFにおいては、われわれは仮想通貨をデジタル資産の一部とみなしている。デジタル資産はオープンネットワーク、非許可型ネットワークと結びついており、そこではその存在自体がネットワークオペレーションの基本部分であり、ネットワークの形式上の発行体は存在しない。これは下記の通りだ。

デジタル資産とは、暗号化キーを用い資産保有者によって直接管理され、一連の権利を有する複数の集団が連携して維持し、更新する共有システムの中にあるデジタルデータユニットである。
デジタル資産とは、暗号化キーを介しての表現、操作が可能なものであり、また互換性がある。
仮想通貨とは、形式上の発行体が存在せず、独占的に発行され、オープンまたは非許可型のDLT(分散台帳技術)システムによって移行されるデジタルトークンである。またそのトークンは、基本となるネットワークから資産を分離させることでシステム全体に害を与えるというような基本となる分散型台帳や分散アプリケーションの経済的インセンティブを持つ構造において不可欠の役割を担っている。

革命や変革、一定数の不正活動に重圧を受けている中、各国の規制機関はどのように対応しているのか。

●これまでの対応

規制の適応は多種多様であると言うほかない。規制の明確化は一貫した用語や資産の性質(担保や純粋価値など)とそれが要する形式(トークン、台帳記録あるいは物理的な証券)の融合性によって左右される。

それでもやはり、各国の規制機関では様々な対処法があり、下記の4つに分類することができる。

1.既存規制の利用(韓国金融投資および資本市場法等)
2.新たな特別法の枠組みの策定(タイの緊急勅令等)
3.既存規制の改正(日本、スイスやエストニア等)
4.仮想通貨やその他活動を対象とする幅広い特別規制体制の構築(メキシコ等)

面白いことに、現行の規制の改正は高水準の仮想通貨活動(われわれの19年の調査では半数以下が行う活動)の権威内で行われている場合が多い。

●展望

デジタル資産の重要性と影響力が世界の規制機関に次第に認識されてきているのは明らかで、フェイスブックのリブラの発表が起爆剤となった。

では、今後数年何が予測されるのだろうか。今までに見た様々な規制適応は国際協力と最善策に重点を置きつつ少数の規制に一本化されるのか。あらゆる意味で発言には早すぎるが、希望を与えてくれる進展は多く見られている。

ひとつ目に、あまり重要ではないが、定義と対策における一貫性が徐々に現れてくるはずだ。われわれの認識では、多くの規制機関がリヒテンシュタイン、米ワイオミング州、スイスや英国の公正タスクフォースなどのデジタル資産規制のパイオニアに注目している。これらイニシアティブを参考に、独自の管轄内に関連する要素を取り入れるためである。

加えて、国際的な中央銀行のDLTとデジタル資産の共同事業(日本銀行と欧州中央銀行のプロジェクト・ステラ、タイ銀行と香港金融管理局のライオンロック・インタノン、シンガポール金融管理局とカナダ銀行によるウービン・ジャスパー)においても、デジタル通貨が幅広い経済分野の中で力活躍する役割にさらに明確性を持った一貫性のある将来展望がみてとれる。

次に、基準となるものが現れているということがある。例として、トークンベースのネットワーク上での相互運用を促進する基準の尺度を示すことができうる複数の有名な支援企業(アクセンチュア、マイクロソフト、R3、IBMを含む)によるトークン・タクソノミー・イニシアチブがある。

最後にもちろん、グローバルデジタルファイナンスのような業界団体を主導とした業界における協力と最善策の促進への取り組みがあげられる。

まとめると、世界中の規制機関による断片的で統一性のない適応状況をみると、仮想通貨とさらに一般的にはデジタル資産が幅広い経済分野で発揮するであろう能力の重要性を認識するという段階は過ぎたようだ。業界イニシアティブによる指針、規制当局と中央銀行の協力、そして規制体制を構築することから得た教訓のすべては、デジタル資産の拡大する役割に対する規制への均質的な取り組みに結び付く。

引用:MORNINGSTAR

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