コロナ危機が変えた、今知っておくべきフィンテック6大トレンド


21世紀に入って以降、我々は今回の新型コロナ危機を含め計3回に及び、金融市場のクラッシュを経験しています。記憶に新しいですが、一度目はドットコムバブルで、二度目がリーマンショックです。しかし今回のパンデミックによる経済危機には、過去二回の危機と決定的に異なる点があります。

それは、危機の要因が金融市場を発端としていない点です。思い返せば、ドットコムバブルは新興テック企業に対する過剰な投資、リーマンショックは金融システムの根本的な失敗を要因としていました。

以上を踏まえると、「今回のパンデミックでは、過去二回の危機に比べ金融産業に対する人々の不信はさほど低下してはいない」と考えることできます。つまり、今回のクラッシュを過去の暴落時と同じように悲観する必要はないということです。

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見方を変えれば、むしろ今起きているロックダウンなどの環境は、特にフィンテック・スタートアップなどにとって大きな成長チャンスだと捉えることもできます。実際にここ数週間、オンライン決済やモバイル金融アプリの利用増加は至る所で観測可能です。

改めて整理しておきたいのは、今この状況下でフィンテックはどのような環境にあり、どのような変化を問われているのかという点です。そこで以下では、現在進行形で進んでいるフィンテック領域のビッグ・トレンド6つを紹介します。

これらのトレンドを把握することで、フィンテック関連企業は今後の戦略を考える上でのヒントを得られるでしょう。

1:レガシー金融産業の衰退

伝統的な金融機関のシステムは、我々の想像を超えるほど時代遅れな状態にあります。ある調査では、金融機関は他産業と比較して圧倒的にデジタル化率が低く、55%の銀行が十分なデジタル化を達成することができていないといわれています。

2017年にAccentureやIBMが実施した調査によれば、43%の銀行システムは未だ1959年に誕生した言語COBOLで構築されています。現在米国では失業申請が急増していますが、COBOLエンジニアの不足が現場対応の遅延を招いているとの報道もあります。

外出自粛を要因にモバイルバンクが台頭する一方、支店サービス及びATM利用は激減し、既存銀行は苦しい状況に立たされています。今となっては、ほぼ全ての銀行がオンラインでサービスを届ける手段を模索していることでしょう。

フィンテック企業は、レガシーな銀行向けに新しいデジタルシステムを提供することができます。例えばOpenLegacy社は、API接続を容易にすることで、古びた銀行コアシステムをウェブやモバイル、クラウド世界に拡張させることが可能です。

2:リモートワークによるセキュリティリスクの拡大

今となっては日常と化してきているリモートワークですが、金融機関がリモート移行に関して最も懸念しているのは、生産性云々ではなくセキュリティリスクの増大です。VPN(仮想プライベートネットワーク)を活用し安全な通信の確保に務めるのは不可欠ですが、そのような処置だけで十分だという保証はどこにもありません。

上記記事のように、在宅勤務が狙い目となりサイバー攻撃を許してしまうケースが発生しています。つまり、金融及びフィンテックセクター向けのセキュリティ企業の出番ということです。

例えば、ITsMine社は、企業のコンプライアンス遵守を妥協しない、予測的な組織データ保護ソリューションを提供しています。PerceptionPoint社が提供するような、マルウェア攻撃の検知システムなどの需要も高まっていくでしょう。

3:完全オンラインのカスタマー対応ツール需要

現在の金融及びフィンテック企業は、顧客を支店に招いて相談やセールスを実施することが厳しい状況にあります。そこで必要となるのが、完全オンラインで顧客とコミュニケーションを取る新しい手段です。

一般的にはコールセンターの拡充やZoomを利用するなどのアイディアが考えられますが、よりテクノロジカルな方法として、AIチャットボットの導入が増加しています。

インシュアテックのユニコーンLemonadeやその他いくつかの先進的なフィンテック企業は、既にAIチャットボットを実装済みです。これに続く形で、今後はよりレガシーな金融機関もAIチャットボットの導入に踏み切ると予想されます。

4:RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)

RPAはAIを搭載したソフトウェアによって、従来ホワイトカラーが行っていた作業を代行・自動化する概念です。以前からも注目を浴びていたコンセプトではあったものの、新型コロナ危機によって企業は一層の自動化及び作業効率化を必要としており、RPAへの需要も増加しています。

5:デジタル・アイデンティティ

銀行情報や医療情報、位置情報など、自分自身に関する全ての情報をデジタルIDに紐付け可能だとしたら、なにが可能になるでしょうか。おそらく、新型コロナウイルス感染拡大を抑制するトラッキングアプリの実装がより簡易化することでしょう。

例えば、完全オンラインでビザ申請を済ませ、デジタルIDにビザ取得証明データを紐付けることで、渡航をスムーズに行うことができます。現在は役所も閉まっていますし、ソーシャルディスタンス実現の観点でも有効なアイディアでしょう。医療情報と位置情報を紐付け可能であれば、認証一つで自分が非感染者であることを簡単に証明できるかもしれません。

フィンテック産業は、本人確認手続き(KYC)の簡易化やデータの利活用の観点で、デジタルIDの実現を長年に渡って求め続けてきました。課題としては、セキュリティはもちろん、プライバシーに対する懸念や標準化不足などがあります。そのため先進国においても、完全なデジタルID社会の到来はまだ先の話になると考えられるでしょう。

しかし先ほどの例を踏まえると、今回を機にデジタルIDの実装は加速する可能性があると考えられます。生体認証や認証などのセキュリティ技術も発展してきているため、今後のフィンテック産業は、デジタルID社会を見据えた方向へシフトしていくと予想されます。

6:キャッシュレス

キャッシュレス化が加速する、あるいは叫ばれる要因は二つあります。一つ目は非接触型決済の増加。二つ目は中央銀行が発行するデジタルマネーの需要です。一つずつ見ていきましょう。

大袈裟な主張かもしれませんが、キャッシュ(紙幣及び硬貨)は、デジタルマネーと比較し、人間同士の直接的な接触を引き起こしやすい取引形態です。加えて、現在は外出自粛下ですから、ECやフードデリバリーの注文に際したカードや電子マネーの利用機会が増えています。

そして現在注目すべきは、今回の危機に対する経済刺激対策の一環として、中央銀行デジタル通貨(CBDC: Central Bank Digital Currency)の必要性が叫ばれている点です。これは中国のデジタル人民元のことではなく、米国の下院金融サービス委員会が提案した、米国の経済刺激策の手段としての”デジタル・ドル”の話です。

完結に話すと彼らはデジタル・ドル及びデジタル・ドル・ウォレットを実装することで、経済援助、すなわち現金給付を効率化できると主張しているのです。これは、銀行口座への送金よりも、ウォレットへのデジタルドル送金の方が業務上低コストだという理屈に基づきます。(※詳細)

上記法案は結果的に否決されるに至りましたが、もし米国が中央銀行デジタル通貨が実現する未来があるとすれば、フィンテック業界に与える影響はさぞ大きなものになることでしょう。

チャレンジャーバンク vs 既存銀行のリテール勝負に決着?
ここまでも述べてきたように、現在のような状況下では人々は銀行支店営業は難しく、かつユーザーも同様に支店へ足を運日ません。そこで代替策として利用されるのが、チャレンジャーバンクなどと呼ばれる金融モバイルアプリです。

CNNによれば、N26の各地はATM利用は半減しましたが、65歳以上のユーザーによるオンライン決済利用が激増しているといいます。今回の危機をきっかけに、ついに高齢層もモバイルバンクを利用する時代に突入したのです。

今回の危機は、チャレンジャーバンクには追い風以外の何者でもありません。未だ確立されたビジネスモデルを作り出していない点が懸念されていることは事実ですが、既存金融と比較して圧倒的に有利な状況下にいることは明白です。

さて、6つのフィンテックトレンドを紹介することで、新型コロナ危機によって生じているフィンテック市場の変化を整理しました。インターネット上での決済及び金融サービスの利用を可能にするフィンテックは、まさにこの時のためにあったのかもしれません。今後のフィンテック市場の成長にも一層期待が高まります。

引用:BRIDGE

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