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ソニー、「金融」親子上場を解消 経営判断を迅速に

ソニーは14日、金融事業を手がける上場子会社のソニーフィナンシャルホールディングスへのTOB(株式公開買い付け)が完了したと発表した。約4000億円でソニーフィナンシャルを完全子会社化する。親子上場の解消で、ソニーは迅速な経営判断を下しやすくなる。安定収益を見込める金融を中核事業と位置づけ、外部環境の変化に対する耐性を強める。

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ソニーは完全子会社化を発表した時点でソニーフィナンシャルに65%を出資していた。5月20日から7月13日までのTOBで、出資比率を93.46%に高めた。手続きを経てソニーフィナンシャルは上場廃止になる。

「私が最高財務責任者(CFO)になった2014年には、金融事業は上場していた方が良いと思っていた」。ソニーの吉田憲一郎会長兼社長はこう打ち明ける。14年3月期の営業利益は前の期比88.3%減の265億円だった。ソニーの業績が低迷し、金融子会社は上場していた方が資金を調達しやすかった。

それでも吉田氏には「本来はコア事業で、過半数の株式を持ったまま上場しているのは健全ではない」という考えがあった。業績の回復を受け、長年の懸案に決着をつけた形だ。ソニーは残りの35%分の株式を取り込み、21年度以降に純利益が年間で400億~500億円増える見込みだ。

親子上場の企業は少数株主への配慮が求められる。ソニー銀行の設立を主導した十時裕樹副社長は株主総会で上場子会社でなくなる利点について「思い切った経営判断ができる」と述べている。事業モデルの大幅な変革や他社との提携など、必要に応じて大胆な戦略を取りやすくなる。

完全子会社化で期待されるのがフィンテック事業の拡大だ。すでに損害保険では人工知能(AI)が運転を分析し、安全なら保険料を安くするサービスを提供している。銀行でもAIによる住宅ローン仮審査の自動化も手がける。AIなどグループの技術と組み合わせることで、新たなサービスを開発する考えだ。

完全子会社化を決めた背景には新型コロナウイルスの影響がある。祖業のエレクトロニクス事業は21年3月期の営業利益がコロナの影響により前期比で最大7割落ち込む見通しだ。米中貿易摩擦など国際情勢の変化も激しいなかで、国内事業が主体の金融事業は安定した収益を見込める。

コロナを背景にTOBを決めたのはソニーだけではない。米ゴールドマン・サックス証券によれば国内のTOBは増加傾向にある。不成立の案件を除いた20年の買い付け金額は7月8日時点で3兆円。過去最高だった07年の2兆6000億円をすでに上回っている。

ソニーは21年4月に社名を「ソニーグループ」に変更し、本社がグループ全体を見渡して経営資源を振り分ける新体制となる。吉田氏は金融事業について「エレキやエンタメに並ぶコア事業と位置づけている」と断言しており、グループ内での連携を深める考えだ。

吉田氏は経営の方針として「人に近づく」というキーワードを掲げている。「(社名変更後も)成長の軸として目指す方向性は変わらない」という。消費者との強い接点を持つ金融事業をどう生かすか。完全子会社化後の戦略は、ソニー全体の先行きを左右するほどの影響力を秘めている。

引用:日本経済新聞

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