継続的な投資で資産形成をしたいという人に対し、国が用意している「積立NISA」という制度。
老後資金や将来の備えのため、これから積立NISAを始めたいと思っている方も多いのではないでしょうか?
積立NISAをこれから始める方や、始めたばかりの方が気になることの一つが、「購入した投資商品はスイッチング(=投資商品を買い替えること)できるのか?」ということ。
この記事では、積立NISAでスイッチングができるのか。また、スイッチングで投資銘柄を変える時の注意点について、分かりやすく解説します。
積立NISAの銘柄途中変更は可能!
積立NISAでは、自分で積み立てる商品と積み立てるタイミングを選択することで、あとは自動的に資産形成をしていくことになりますが、積立投資をする商品の銘柄はいつでも簡単に変更することが可能です。
銘柄の途中変更の細かい方法は証券会社ごとに変わってきますが、基本的には「積立中の銘柄の新規購入の設定を停止し、次回以降の積立銘柄を別のものに変更する」という流れで手続きを完了させられます。
ネット証券であれば、これまでの手続きを5分から10分程度で行えるはずですので、特に難しいものではありません。
上記の方法であれば、積立NISAの年間非課税枠を無駄に消費することもありませんし、積み立てる金額が変わってしまって家計を圧迫するということもないので安心してください。
ただ、一点ここでしっかりと認識しておかなければならないことがあります。それは、「この方法は今まで投資していた銘柄への投資を停止してるにすぎず、今まで投資した商品を売却しているものではない」ということです。
後ほど詳しく解説しますが、特に積立NISAにおいて、売却による銘柄変更はできるだけ行わないようにしましょう。
売却による銘柄変更(スイッチング)には要注意
先ほどは、既存の積立設定を停止し、次回以降の積立で購入する銘柄を変更する方法を解説しましたが、銘柄変更をするにはこれ以外の方法もあります。
特に、既存の積立で購入した投資信託などを売却し、その売却額を購入資金として別の銘柄を購入するような銘柄変更(≒スイッチング)については特に注意して実行しなければなりません。
積立NISAにおいてスイッチングを行うことは、よほどのことがない限り行うべきではないとされています。
その理由について、このあと詳しく解説していきます。
そもそもスイッチングとは?
スイッチングとは、保有している投資信託を買い替えることを言います。
もう少し具体的にいうと、今まで積み立ててきた投資信託の銘柄を売却・解約することで、別の銘柄に新しく買い替えることを指します。
広義で言えば、上記以外にも「同一の商品で、その商品に組み込まれている金融商品を乗り換える・配分を変える」という意味も持っています。ただ、そのようなスイッチングができる商品は、積立NISAの対象銘柄とはなっていないため、この記事では前者の意味としてスイッチングという言葉を用います。
スイッチング自体は特に違法であったり、どんな状況に応じてもNGな行為ということではありません。
事実、金融商品によってはスイッチングができることを魅力ポイントの一つとして設計されているものもあります。
スイッチングをすることのメリットとしては、今まで購入済みの金融商品を売却した金額で新たな金融商品を購入することになるため、現在手持ちのお金が少なかたっとしても、ある程度まとまった金額で新規銘柄への投資が可能になるということが挙げられます。
「この銘柄は中長期的に見て、今持っている銘柄よりも必ず上がるだろう」と確信が持てるような場合は、このメリットが大きくはたらくはずです。
しかし、積立NISAだけで考えるのであれば、スイッチングという方法はほとんどのケースにおいてNGだと言えます。
その理由と、スイッチングではなくどんな方法で銘柄変更をすればいいのかについて見ていきましょう。
なぜスイッチングはNGなのか
積立NISAにおいてスイッチングがNGという理由をお伝えする前に、大前提として積立NISA制度そのものを確認しておく必要があります。
積立NISAは、金融庁に届出のあった、資産形成に適した投資信託約200銘柄(2022年8月時点)に定期的な投資ができるという制度です。
通常、投資信託や株といった金融商品の運用にあたっては、売却によって得た利益や配当金などに対し、およそ20%の税金がかかってきます。
しかし、積立NISAであれば年間40万円を非課税枠の上限として、買い付けた金融商品に関する利益が、最長20年間非課税になるといったメリットが享受できるのです。
この上限金額こそ、積立NISAでスイッチングをしてはいけない理由の一つとなります。
例えばある年で既に10万円積立NISAで投資していたとしたら、積立NISAで購入できる金額は残り30万円となります。
この時、今年買った10万円の金融商品を売却したとしても、積立NISAの非課税枠が復活することはありません。
本ケースで言えば、10万円売却後、残り一年間で積み立てられる金額は30万円のままです。
先ほど、スイッチングのメリットとして「売却して得たまとまったお金を投資に回せる」ということを挙げましたが、積立NISAの場合はそもそも投資できる非課税枠が買い切りとなっているため、新しい銘柄をたくさん購入するということ自体ができないのです。
もちろん、特別な事情があって手元にある程度のお金が必要な場合であれば、積立NISAを売却することもあるでしょう。
しかし、スイッチングを目的として積立NISAで購入した金融商品を売却してしまうことは、よほどのことがない限りやめておくのが無難です。
銘柄を変更したくなったら「保有」しよう
積立NISAにおいて、売却を伴うスイッチングはすべきでないと言っても、投資先となる銘柄を変更する・したいと思うタイミングは来るでしょう。
そのような時は、既に投資している銘柄を保有し続けたまま、新しい銘柄の積立を始めることがおすすめです。
積立NISAの投資可能先として選定されている銘柄は、どれも長期投資をすることでリターンの最大化が狙える設計になっているものです。
つまり、積立NISAの非課税期間である20年を待たずして売却してしまうということは、トータルで見た時に損をしやすいと考えられるのです。
加えて、先ほど述べたようにスイッチングをしたからといって、年間40万円の非課税枠が復活することもありませんので、積立NISAを早々に売却するメリットがほぼないとすら言えます。
売却をせず保有し続けることで、その銘柄が将来値上がりした時に利益を得られる可能性もあります。
株などの投資商品であれば、将来的なパフォーマンスを読み切ることができませんが、積立NISAの対象銘柄は長期保有で利益が出る可能性が高いことを金融庁に認められているといった違いがあります。
これらの理由から、今まで積立NISAを活用して購入してきた金融商品は、売却せず保有し続けることが大切になってくるのです。
また、ここで合わせて認識しておいて欲しいのが、売却か保有の0か1だけの選択しだけでなく、既存商品への積立金額を減額して投資を続けるという考え方です。
積立NISAにおける毎回の積立金額はいつでも増減させることができます。
投資の世界には「ドルコスト平均法」と呼ばれる考え方があります。簡単にいうと、値動きする同じ金融商品を定期的に同額分購入することで、平均購入金額を高い確率で下げられるといった投資手法のことを言います。
既存の積立設定から減額して積立を続けるようにすれば、ドルコスト平均法も相まって、リターンを最大化することに繋がると考えられます。
銘柄変更すべきタイミングは?
積立NISAにおいて、投資する銘柄を変えること自体に問題はありません。
しかし、金額が増減する金融商品の銘柄を変えるタイミングを間違えてしまえば、無駄に損をしてしまう可能性も少なくはないでしょう。
具体的には、投資している商品において、次のような状況になった場合は、銘柄の変更を検討してみてもいいかもしれません。
ただし、積立NISAはほったらかしこそがおすすめ!とも言われています。よく検討する必要があるでしょうか。
積立NISAはほったらかしでも大丈夫?定期的にチェックすべきポイントを解説!
より安価な信託報酬の商品が出た場合は検討を
そもそも投資信託には、手数料のようなものが存在する商品があります。中でも特に積立NISAの場合は意識しておきたいのが信託報酬です。
信託報酬とは、投資信託を運用・管理していることに対して発生するコストのようなもので、投資信託を保有している投資家が運用してくれている会社に支払うことになっています。
コストの支払い方は、保有する投資信託の純資産総額に対して○%といった形で毎日差し引かれる方法が取られていますので、別途支払いが求められるということではありません。
積立NISAの場合、銘柄の多くがインデックス型の投資信託になっています。
インデックス型とは、日経平均や米国のS&P500など、ベンチマークとする指標と同じように変動するよう運用をする方針のことを言います。
そのため、同じ指標をベースとしたインデックス型の投資信託がある場合、投資結果はほぼ同じになると考えられます。逆を言えば、保有中のコストが低ければ低いほど、得られる利益が大きくなるのです。
信託報酬はその投資信託を保有している限り発生し続けるコストです。
積立NISAの場合、最長で20年間もの期間で保有し続けることになりますので、信託報酬が0.1%違うだけでも長期的に見た支払いコストは馬鹿になりません。
これらのことから、現在保有している投資信託と全く同じベンチマークをしているインデックス型投資信託で、より安価な信託報酬のものが出てきた時は、銘柄変更をするのがおすすめです。
具体的には、今の銘柄よりも信託報酬が0.2%以上低い場合、銘柄変更を検討するラインとなってきます。積極的に銘柄変更を考えるようにしてください。
また、これから積立NISAを始めるという方の場合は、積立設定する銘柄として信託報酬が0.1%台かそれ以下のものを選んでおくことで、後々銘柄変更をする手間を省けるので、合わせて認識をしておきましょう。
投資信託が値下がりした場合は継続を
投資している投資信託が値下がりしてしまった時、これ以上値下がりしてしまう前に売却した方がいいのではないかと考えるかもしれませんが、その場合は逆にチャンスとして投資を継続するのがおすすめです。
積立NISAでは、同じスパンで同額の積立を行っています。
そのため、投資信託が値下がりしている時は、同額でより多くの口数分の投資信託が購入できるといったメリットがあるのです。
それだけでなく、投資信託は長期積立を行えば行うほど、元本割れしてしまうリスクが低くなることが金融庁からも報告されています。
もちろん、短期的に見ると投資商品の値下がりに焦りを感じてしまうかもしれないでしょう。
しかし、積立NISAはそもそも20年のスパンでゆっくりと資産形成をしていくことを目的とした商品なのは間違いありません。
また、長期的な運用をすることで複利効果によるリターン増も見込めます。
慌てずにどっしりと構えることこそ、積立NISAを上手く運用することの秘訣だと言えるでしょう。
まとめ
積立NISAは、投資先を変えることこそできますが、売却を伴うスイッチングはデメリットが多いため、できるだけ避けるようにしましょう。
特に、信託報酬の低い投資信託が出てきた場合は銘柄の変更を検討すべきですが、その際は既存の投資信託の積み立てを停止・減額し、新たな銘柄を追加購入するようにしてください。
投資信託は、長期的に保有した方がリターンが期待できやすいということを理解した上で、積立NISAを活用していくのがおすすめです。