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コロナ危機をチャンスに変えたフィンテック「スクエア」の進化

サンフランシスコ本拠の決済企業スクエアは、2013年4月に送金サービスの「Square Cash」を始動させ、フルサービスのデジタル銀行に向けての進化を緩やかに進めてきた。同社は新型コロナウイルスのパンデミックを受けて、その動きを加速させている。

Square Cashの専用アプリ「Cash App」は2018年の初旬から、貯蓄や様々な決済に加え、株式投資やビットコインの購入に対応していた。同社のCEOのジャック・ドーシーは今から約2カ月前に、新型コロナ危機を受けてCash Appを用いた米国の1200ドルの緊急経済支援給付金(PPP)の受け取りを簡易化すると宣言した。

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スクエアは米国の銀行とパートナーシップを結び、Cash Appで給与振り込みを受けられる仕組みを整え、対象となるユーザーをこれまでの300万人から1400万人に拡大した。同社は5月初旬に公開した株主向けの年次報告書で、Cash Appの預かり額が13億ドル(約1400億円)に達したとアナウンスした。

企業価値が60億ドルに及ぶ米国で最も高評価なデジタル銀行のChimeは、以前から給与振り込み口座が持てる点をアピールしてきたが、スクエアはこの点でも同社を追い上げようとしている。スクエアはさらに、Chimeの強みだった給料振り込みの2日前に資金を受け取れるサービスを同社のプラットフォームに追加した。

クレディ・スイスは先日開示したレポートで、3月末時点で50万件だったCash Appの給与振り込み口座数が、120万件に増加したと試算した。Chimeのアカウント数は800万件で、推定530万人が利用中だが、給与振り込み口座数は200万件程度だとされている。

スクエアは今後もデジタル銀行への進化を続けていくと、クレディ・スイスのアナリストのTimothy Chiodoは述べている。「今後は予算管理ツールや、公共料金支払い機能に加え、クレジットカード機能やバイナウ・ペイレイター型のローンも追加される見通しだ」と彼は述べた。

スクエアは伝統的な銀行と同様な手法で、収益を増大させていくだろう。最初は1つの機能で顧客を呼び込み、他の金融サービスに誘導するのだ。Cash Appにおいては、フレンド宛ての送金は無料で、株式も無料で購入できる。

銀行から顧客を奪う

しかし、銀行への即時送金の場合Cash Appは、1.5%の手数料を徴収している。クレディ・スイスはCash Appの昨年の売上5億8900万ドルの半分以上が、銀行への送金手数料だったと試算している。同社はCash Appの年間粗利益が2023年までに10億ドルから20億ドルに達すると予測しており、スクエア全体の粗利の半分を占めるようになると見込んでいる。

スクエアの主要出資元の1社であるニューヨークの投資マネジメント会社Arkは、スクエアが伝統的金融機関から顧客を奪い取ると予測する。Cash Appの顧客獲得コストは1人あたり20ドル程度だが、銀行の場合は1000ドル近くに及ぶという。

さらに、アナリティクス企業のNovantasのデータで、銀行の顧客のライフタイムバリューは1500ドルから4000ドルとされているが、Arkはデジタル銀行の顧客の価値が8年間で900ドルを上回ると述べている。

投資家らはCash Appの近年の進化に目を見張っている。スクエアの株価は5月6日の第1四半期決算発表以降に10%の上昇となった。パンデミックの発生を受けて、多くの企業の株価は急落したが、スクエアの株価は2月9日の年初来最高値をわずか4%下回る水準まで回復している。同期間のS&P 500は13%の下落となっている。

引用:Forbes

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